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討論

 

平成11年 7月 1日 第2回定例会本会議より

「通信傍受法案に関する意見書」への反対討論

 

提出された「通信傍受法案に関する意見書」

 さる6月1日、衆議院において通信傍受法案を含む、組織犯罪対策三法案が可決され、 現在、参議院での審議が進められています。
 この法案は、日本国憲法第21条「通信の秘密」に違反しており、犯罪捜査の名のもとに、 警察による「盗聴」を法律で認めようというものです。
 憲法では、私たち国民の電話や電子メールなどによる会話や通信を、 他人に見聞きされることのないよう保障されていますが、 この法案は、憲法を無視して警察が国民のプライバシーを侵害することを認めるものです。
 具体的に、「盗聴の対象者は犯罪者に限る」といっていますが、 通信等しているものを盗聴する以上、その対象者に関係するすべての通信等が盗聴の対象になります。
また、盗聴に際しては「裁判所の令状発行があるから、人権は守られる」といっていますが、 通信内容は盗聴して初めてわかるものであり、この法案では、 「疑うに足りる」というあいまいな条件で盗聴は無制限に行われることになります。
さらに、法案の第23条には「通信の当事者に対する通知」ということがうたわれていますが、 これは、犯罪関係者に盗聴したことを事後通知するということですが、 それ以外の関係ない盗聴がどれだけ行われているかはまったくわかりません。
よって、武蔵野市議会は、このような国民の人権・プライバシーを侵害するおそれのある内容を含む法案が、 国民にほとんど内容も知らせずに強行的に成立されようとしていることに強く反対いたします。
以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出いたします。

平成11年7月

 

「通信傍受法案に関する意見書」への反対討論

島崎義司

 先般、衆議院を通過した通信傍受を中心とする組織犯罪対策三法案は、 近年多発する薬物や銃器にかかわる事件により、 国民の生命・財産・自由・健康が脅かされるという深刻な事態の中で、 特に組織的殺人、麻薬、銃器関連犯罪、 集団密航などの組織的かつ密行的に行われる凶悪犯罪をその対象としているものです。
これらの犯罪は犯行後にも証拠を隠滅したり、犯人を逃亡させるなどの工作が行われ、 その実行手段として電話を初めとする各種通信手段が使われています。犯罪を実行する末端の者は検挙出来たとしても、 首謀者についての供述や関与の状況・証拠を掴むことができない中で第二・第三の犯行が行われ、 多くの市民が巻き添いになることも少なくないのは、各種報道でも伝えられ我々が知るところです。

 同法案は組織犯罪根絶の最後の手段と言われ、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、 カナダなど主要先進国のほぼすべてにおいて通信傍受制度に関する法整備がなされており、 オウム真理教によるかつての事件のような組織的殺人や、 激増する集団密航などの捜査に有力な法的武器となります。
1995年、フランス中を震撼させた連続爆弾テロ事件のうち、 フランスの新幹線・TGV爆破未遂事件の犯人逮捕は公衆電話の傍受がきっかけとなったといいます。
 フランスのテロ事件専門の検事の一人は「フランスのテロ事件の犯人逮捕や 犯人特定は4分の3が通信傍受の成功による」と明言しているそうです。
 国境や地域の壁を超えて起きる犯罪のボーダーレス化に加え、 パソコンや携帯電話など通信網を悪用した犯行を未然に防ぐとともに、 いち早く摘発するための通信傍受の法整備は国際国家・日本としての責任でもあると考えます。

 今回、審議されている通信傍受の対象は組織的殺人、薬物、銃器関連犯罪、集団密航に限定され、 それも裁判官の令状の発行を待って、第三者の常時立会いを必要とし、 通信記録は立会人が封印の上、裁判所に保管。不服がある関係者は裁判官に申し立てることが出来、 違法な手続きでの傍受は裁判で証拠に出来ない事にもなるなど、 傍受の事前、実行、事後のいずれも他国ではあり得ないほど厳格な要件が付けられております。
 また、捜査当局および関係者が通信の秘密を侵した場合には、 3年以下の懲役又は100万円以下の罰金という重い刑罰も付されております。

 今回提出された意見書では、裁判所の令状発行に関し 「同法案では"疑うに足りる"というあいまいな条件で盗聴は無制限に行われることになります」 と断じていますが、これは勘違いか意図的な間違いです。
 同法案では『傍受令状には容疑者の氏名、容疑事実の要旨、罪名、罪状、傍受すべき通信、 対象の通信手段、傍受の方法と場所、期間、条件を記載することが定められ、 しかも"無制限"ではなく延長を含め30日間を超えることは出来ない』となっているのです。

 このように制度が捜査機関に濫用されない手当とともに、 犯罪防止とプライバシー保護の調整をはかるための要件は十分に満たされているものと考えます。

 5月21日の衆議院法務委員会の質疑では、 委員が一連のオウム犯罪の原点である坂本弁護士一家の殺害事件を引き合いに、 「当時、通信傍受の法律が出来ていたら平成6年の松本サリン、 平成7年の地下鉄サリンなどオウムによる一連の事件はなかったのではないか。通信傍受はオウムのような閉鎖的犯罪組織の対策には極めて有効な手段ではないか」 と法務省の見解を求めたところ、法務省刑事局長は「坂本弁護士事件では、松本被告と実行行為者 との間で犯行直後の結果報告や死体遺棄場所と方法の相談、 本部機関の指示などが電話で頻繁に連絡がとられている。通信傍受法案は準備行為の段階での傍受が可能で、犯罪を仰止できるほか、 組織を検挙できる点で有効な捜査手法」と答弁しています。
 これは当時、組織犯罪対策法が整備されていれば、無差別殺人の両サリン事件などは未然に防げた可能性を指摘したものです。 今般、同法案に反対する党派の「一般市民にも拡大されかねない」 「監視社会を招く」といった感情的とも言える主張には、犯罪被害者や"通信傍受は誰の為か"という、 そもそもの視点が抜け落ちていると指摘せざるをえません。

 また、この意見書には日本国憲法第21条「通信の秘密」に違反しておりー云々ーとありますが、 他方、憲法第12条及び第13条は、公共の福祉による制約を規定しており、 通信の秘密の保障も、絶対無制限のものではなく、公共の福祉の要請に基づく場合には、 個人の自由やプライバシーが"必要最小限の範囲内での制約"が許されるということは、 憲法解釈の常識です。

 「意見書」のことさらにプライバシーを強調し、 国民の不安や誤解を煽りたてる文言がそこかしこに並べ立てられていることは、 本来の目的である"国民の暮らしを守る"と言う大事な視点から目を覆い隠してしまうと言う意味で、 問題であると考えます。
同法案を、内容の上からもとりちがえ、あるいは意図的に解釈をねじ曲げるこの「意見書」には 武蔵野市議会の"名誉と誇り"と同時に"市民生活の安全確保の責務"の上からも反対を致します。

 尚、本意見書は、まことに残念ながら『反対討論』むなしく、多数決により、 14対15という僅差で採択されてしまい、市議会議長名で 内閣総理大臣・法務大臣・郵政大臣・自治大臣に送られることになりました。

 

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