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討論

 

平成14年 6月27日 第2回定例会本会議より

「住民基本台帳ネットワークシステムの稼動の延期を求める意見書」への反対討論

 

提出された「住民基本台帳ネットワークシステムの稼動の延期を求める意見書」

 今、政府が進めようとしている住民基本台帳ネットワークシステムが、 2002年8月から稼働する予定になっています。このシステムを稼働するにあたり、プライバシーの侵害の危険があるとして、住民基本台帳法付則第1条第2項で「この法律の施行に当たっては、政府は個人情報の保護に万全を期するため、速やかに所要の措置を講ずるものとする」と規定したことを受けて、行政機関個人情報保護法案が提案されました。
 しかし、この法案は、特定の目的のために取得した個人情報について、行政機関の判断で利用目的を変更することを認め(3条3項)、行政機関内部での目的外利用(8条2項2号)や、行政機関同士での情報提供(同3号)なども広く認めています。
 先日、明らかになった防衛庁の個人情報リスト問題から考えても、大量の個人情報を保有している行政機関に対して、恣意的利用を監視・制限する視点から、この個人情報保護法案の抜本的修正が必要であるといえます。 
 したがって、武蔵野市議会は、個人情報保護の点で十分な法的拘束がないまま、住民基本台帳ネットワークシステムが稼働することには、住民を守る立場から賛成できません。
 2002年8月稼働にこだわらず、十分な検討のため、延期を強く求めるものであります。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

平成14年 6 月 27 日

武 蔵 野 市 議 会 

 

「住民基本台帳ネットワークシステムの稼動の延期を求める意見書」への反対討論

島崎義司

 ますます進むデジタル・ネットワーク社会の中で、住民負担の軽減、住民サービスと利便性の向上、国・地方を通じた行財政改革のためにも、行政の高度情報化の推進は必要不可欠であります。
 住民基本台帳ネットワークシステムとは、こうした情報化社会の要請に応えるための基礎となる、全国規模での本人認証を効率的に行なうシステムのことです。

 住基ネットを構築するために必要な「改正住民基本台帳法」は、平成11年8月に成立しましたが、政府は、その改正理由について、「住民の利便を増進するとともに、国および地方公共団体の行政の合理化に資するため、住民票の記載事項として新たに住民票コードを加え、住民票コードをもとに市町村の区域を超えた住民基本台帳に関する事務の処理および国の機関等に対する本人確認情報の提供を行なうための体制を整備し、あわせて住民の本人確認を保護するための措置を講ずる」と説明しました。

 近年は、民間企業や行政機関等が全般にわたり、コンピュータやネットワークを利用して大量の個人情報を処理しており、こうした個人情報の取り扱いは今後益々拡大していくものと考えられます。
 個人情報は、いったん誤った取り扱いをされると、個人に取り返しのつかない被害を及ぼすおそれがあります。
 実際、企業の顧客名簿などの個人情報が大量に流出するといった事件が相次いだり、個人情報が売買の対象とされたりしているケースも生じ、個人情報の取り扱いに対する社会的な不安感が広がっています。
 そこで、国民が安心してIT社会の便益が受けられるよう、個人情報の適正な取り扱いのルールを定め、国民の権利・利益の侵害を未然に防止しようとするものが、現在提出されている「個人情報保護法案」であります。

 国際的にも、個人情報保護に関する各種の取り組みは進められており、特にEUにおいては近年、個人情報の保護のレベルが十分でない第三国への個人情報の移転を制限する方針を打ち出しています。
 こうした状況や電子商取引の急速な拡大などを背景として、国際的にも整合性を保った国内法制の整備が急務となっているのです。

 これらの状況を踏まえて「個人情報保護法案」は、より良いIT社会の実現に向けて、その制度的基盤の1つとして、個人の情報保護のための仕組みを整備しようとするものなのであります。

 この法律案では、まず、公的部門・民間部門を通じ、個人情報を取り扱うすべての者が、個人情報の取り扱いに当たって、個人情報の保護のために自ら努力すべき一般ルールを「基本原則」として定めています。
 さらに、特に、個人情報をコンピュータ・データベースなどに入れて事業に用いている事業者、いわゆる「個人情報取り扱い事業者」については、「個人情報取り扱い事業者の義務」の規定を設け、より具体的で明確なルールを定めています。
 なお、公的部門の個人情報の取り扱いについては、昭和63年に「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」、いわゆる行政機関個人情報保護法が制定されていますが、この法律案が閣議決定されたことを踏まえて、行政機関個人情報保護法の改正案と独立行政法人等個人情報保護法案も今国会に提出されています。

 では、本意見書で心配されている、国の行政機関や地方公共団体の保有する個人情報については、どのように保護されるのかという問題ですが、平成13年4月の段階では、60.1%の地方公共団体において個人情報保護条例が制定され、その適正な取り扱いが図られていますし、また、条例ではなく、規則や規程等により個人情報保護対策を講じている自治体を含めると全体の79.6%が何らかの形で個人情報保護対策を講じていますが、この「行政機関個人情報保護法の改正案」では、地方公共団体に対しても、保有する個人情報の性質・目的などを勘案し、その適正な取り扱いが確保されるよう必要な措置を講ずることが求められております。

 「個人情報保護法案」がもたらす、消費者へのメリットについてですが、一般消費者との関係でいえば、例えば、企業が保有している顧客情報等は、原則として、本人の同意のない第三者に提供することを禁じており、身に覚えのない企業等から自分の個人情報を知っているとしか思えないような内容のダイレクトメールが来ることなどを防止することができます。
 そして、個人情報取り扱い事業者の個人情報の取り扱いについて問題がある場合は、直接その事業者に苦情を申し出て、是正を求めることができます。
 また、自分のデータについてチェックできるよう原則としてその内容の開示や訂正、利用停止を求めることも認められます。
 さらに、認定個人情報保護団体や地方公共団体が設置する消費者相談機関などに苦情の処理を申し出ることもできます。
 そうした機関や団体を利用しても個人情報取り扱い事業者による個人情報の適正な取扱いが実現されない場合には、最終的には主務大臣が勧告、命令等の措置をとることができるほか、開示等の実施に関しては、裁判手続を利用することが可能です。

 個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に、慎重に取り扱われるべきものです。そこで、この「個人情報保護法案」では、「利用目的による制限」、「適正な取得」、「正確性の確保」、「安全性の確保」、「透明性の確保」の5つの「基本原則」を定めています。
 「基本原則」では、全ての個人、団体、法人、機関が個人情報の保護のために、自ら、この5つの原則に則して、個人情報の適正な取り扱いを行うよう努力すべきことを定めています。具体的にどのような取り扱いが適正であるかは、自ら、公益上の必要性や正当な事業活動の必要性を考慮しつつ、個人情報の保護の必要な範囲を判断していくことになります。したがって、「基本原則」は、具体的な義務を課すものではなく、公益上必要な活動又は正当な事業活動における個人情報の取り扱いを制限するものではありません。

 新聞やジャーナリストの間からは、報道機関に「基本原則」が適用されると、取材・報道活動に支障が出るのではないかという懸念が出ているようですが、「基本原則」は、報道目的を含め個人情報の有用性に配慮しつつ、官民を問わず個人情報を取り扱う全ての者が、自ら、個人情報の適正な取り扱いを行うよう努力すべきことを定めているもので、すなわち、基本原則はこれに基づいて具体的な義務が課されるものではなく、公権力の関与や罰則も一切ないのです。
 したがって、報道機関については、例えば「適正な取得」に関して、報道の重要性・公益性、取材の困難度、本人の権利・利益保護の必要性等を考慮して自らの判断で適切な取材方法を選択するなどの努力を求めるものにとどまり、報道機関の取材・報道活動の制限とはなりません。

 「個人情報保護法案は、民間事業者に対する罰則が設けられているのに、行政機関を対象とする法案には罰則がないのはおかしい!民間部門の規律に比べ、行政機関の規律が甘いのではないか。」との批判がありますが、行政機関については、個人の秘密の漏えいに関し、すでに国家公務員法に守秘義務と懲役1年以下の罰則が設けられています。
 その意味では、意見書が懸念するような防衛庁の個人情報リスト問題についていえば、今回の“事件”は、リストの「漏洩」問題であって、リスト「作成」の側面を必要以上に問題視するのは妥当とは言えません。国家の最高危機管理を担当する防衛庁が、軍事情報の開示請求者がどういう人物であるかを把握するのは当たり前の話で、問題は、そうしたリストを庁内LANに掲示し、業務に関係ない職員まで、閲覧可能な状態においたことなど、本来は極秘扱いとすべきものを安易に取り扱っていた「管理」のずさんさにあるのであり、違法行為を犯した公務員には法によって刑罰が下されることになっているのです。
 これに対して、現在、民間については、一般的な守秘義務制度はありません。民間事業者の漏えい行為などに対しては自主的な是正を求め、直接罰則で担保する仕組みは設けていません。ただ、悪質な事業者が、主務大臣からの助言、勧告、改善命令等にも応ぜず自ら改善しようとしない場合は、その改善命令を守らないことに対する懲役6月以下の罰則を規定しているのみです。

 近年の国際的な情報化の流れの中で、個人情報の保護に当たっては、国際的にも整合性を保った制度とすることが重要です。
 OECD(経済協力開発機構)では、プライバシー保護のための各国の法制度が国際的な情報の流通に支障を及ぼすことを防止するため、1980年に「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのOECD理事会勧告」を採択したました。
 この中で、「プライバシーの保護」と「情報の自由な流通の確保」という競合する価値を調和させることを目的として、いわゆる「OECD8原則」を盛り込んだガイドラインを示し、加盟各国に対して、国内法制に反映させることを求めています。

 OECD8原則とは、
(1)として、利用目的を明確にし、データ利用は収集目的に合致するべきという「目的明確化の原則」
(2)として、データ主体の同意がある場合、法律の規定による場合以外は目的以外に利用してはならないという「利用制限の原則」
(3)として、適法・公正な手段により、かつ適切な場合には情報主体に通知又は同意を得て、収集されるべきという「収集制限の原則」
(4)として、利用目的に沿ったもので、かつ、正確、完全、最新であるべきという「データ内容の原則」
(5)として、合理的安全保護措置により、紛失・破壊・使用・修正・開示等から保護するべきという「安全確保の原則」
(6)として、データ収集の実施方針等を公開し、データの所在、利用目的、管理者等を明示すべきという「公開の原則」
(7)として、自己に関するデータの所在及び内容を確認させ、又は異議申立を保障すべきという「個人参加の原則」
(8)として、管理者は諸原則実施の責任を有するという「責任の原則」です。

 これにより、OECD加盟国29カ国中、個人情報保護法を有しているのは現在27ヶ国、日本のほかの1カ国は法案提出中であり、このうち民間事業者を包括的に対象とする個人情報保護法を有しているのは24カ国となっています。
 具体的には、ヨーロッパでは、EU統合の進展に伴い、EU域内での情報の自由な移動を確保する必要性の高まりなどから、1995年に「個人データ処理に係る個人の保護及び当該データの自由な移動に関するEC指令」を採択しました。
 EU加盟各国では、この指令に沿って国内法制を順次整備していますが、例えば、ドイツでは2001年改正の「連邦データ保護法」、イギリスでは1998年改正の「データ保護法」、フランスでは「情報処理・データファイル及び自由に関する法律」など、各国によりその態様はさまざまです。
 アメリカでは、公的部門については、1974年制定の「プライバシー法」により規制されています。なお、アメリカは民間部門については、自主規制を基本とし、包括的な法律を持たずに、特定分野のみを対象とした個別法により規制しています。
 EU指令では、十分な個人情報保護のレベルを実現していない第三国へのEU諸国からの個人情報の移転を禁止する条文を各国法に求める、いわゆる「第三国条項」が含まれていますが、これに対応するため、米国では、商務省作成のガイドラインである「セーフハーバー原則」の遵守を自ら宣言した米国企業はEUと同水準の個人情報保護がなされているものとみなし、EUからの個人情報の移転を認めることとされました。同原則への遵守を宣言した企業の違反に対しては、連邦取引委員会(FTC)が不公正取引として制裁を加えることとなっています。

 このように、ほぼ全ての先進国が「個人情報の保護」について、法整備と違反者への罰則を規定して、世界的な情報ルールのうえにたって、社会・経済・政治あらゆる活動が展開されているのです。その意味でも、今回、日本で出されている「法案」はOECD基準に則ったものであり、遅ればせながら世界基準の上にたてるものになるのです。

 私たちは、個人情報保護に関する関連法案と住民基本台帳ネットワークシステムの稼動は一体のものと考えておりますので、まずは、現在行なわれている国会で提出されている、いわゆる「個人情報保護法案」「行政機関個人情報保護法案」「独立行政法人等個人情報保護法案」が十分な議論のうえで成立し、住民の利便性の向上、行財政改革推進の意味でも、個人情報がしっかりと保護されながら、住民基本台帳ネットワークシステムが正しく稼動することができることを念願して、国会での法案審議の推移を見守る必要はありますが、現段階では、本意見書には反対の討論とさせていただきます。

 なお、残念ながら、この意見書は賛成多数で採択され、7月11日付、武蔵野市議会議長名で、内閣総理大臣、総務大臣宛に送付されることになりました。

 

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