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討論

 

平成15年12月17日 第4回定例会本会議より

「イラクへの自衛隊派遣の撤回に関する意見書」への反対討論

 

議員提出された「イラクへの自衛隊派遣の撤回に関する意見書」

 12月9日、政府は、「イラク特措法」に基づくイラクへの自衛隊派遣の「基本計画」を閣議決定しました。自衛隊派遣という国会意志を表明する重大決定にもかかわらず、政府は国民への説明責任を全く果たしていません。アメリカが、イラクへの先制攻撃の根拠とした大量破壊兵器はいまだ見つからず、戦争の大義に疑問を残したままの決定です。イラク情勢はブッシュ大統領の戦争終結宣言後も悪化を続け、日本人外交官を初め多くの犠牲者が出ています。イラクは非戦闘地域が一瞬にして戦闘地域に変わり得る状況であり、現状での自衛隊派遣は「イラク特措法」の枠組みを超え、事態によっては憲法に抵触する恐れもあります。
 小泉首相は「テロには屈しない」と言いながら自衛隊派遣方針を押し通そうとしております。しかし、その言葉だけで自衛隊派遣が正当化されるわけではありません。いま日本のとるべき道は、ブッシュ政権を国際協調の枠組みに引き戻し、国連主導による復興支援を追求していくことであり、国際社会が一致して協調できる新たな国連安保理決議の採択やイラク国民による政府の樹立へ向けた外交努力の強化です。
 このたび閣議決定した「基本計画」では、派遣時期、部隊規模など肝心な点に言及することは避けています。いまから国民の力で自衛隊派遣をやめさせたいと考えます。
 よって、武蔵野市議会は、貴職に対し、政府の「イラク特措法」に基づくイラクへの自衛隊派遣の撤回を求めます。
 以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出いたします。

 平成15年12月  日

武蔵野市議会議長 田 中 節 男

衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣     あて
内閣官房長官
防衛庁長官

 

「イラクへの自衛隊派遣の撤回に関する意見書」 への反対討論

島崎義司

 11月29日、イラクの人道復興支援協力という政府の方針に従い、全精力を傾けてイラク全土を奔走していた2人の日本人外交官、奥克彦参事官と井ノ上正盛書記官が、イラク北部での復興支援会議に向かう途中のティクリートで銃撃を受けて殉職するという、誠に痛ましい事件が起きました。ちょうど、テロリストが各国の足並みの乱れを誘発することを狙って、米軍以外の他国の軍隊や施設はもとより、外交官など文民にもテロのターゲットを向けはじめたと言われていた時期で、日本の外交官や施設についても、テロ攻撃への対応が課題とされていただけに残念でなりません。

 武器を持たず、十分な護衛もつけることができないまま、危険を顧みず、イラク復興の日を夢見て全土を駆け巡り、懸命にその使命を果たそうとした奥参事官と井ノ上書記官の勇気と献身に、日本人として、改めて敬意と感謝を表すると同時に、二人が志なかばにして凶弾に斃れた無念とご家族のご心痛を思うとき、心から哀悼の意を申し上げたいと思います。

 今回のような悲劇に直面すると必ず高まるのが自衛隊派遣反対論ですが、日本人外交官銃撃事件と相前後してイラクでは各国の犠牲者が相次ぎ、バグダッド南部で襲撃され死亡したスペイン情報機関要員ら7人の遺体が11月30日にマドリードに到着したさい、同国のアスナール首相は「我々はテロの犠牲者を残してイラクを去ることはしない。責任は完遂する」と演説しました。また、民間人2人が殺害された韓国でも、大統領国家安全補佐官は「今回の事件と追加派兵問題を関連して考えるのは適切ではない」と強調しました。いかなる困難に直面しても、テロにうろたえ、たじろいでいる国は見当たらず、これがまさに世界の責任ある国家の態度なのです。

 亡くなった奥参事官も、外務省のホームページに4月以来連載していた11月13日付の『イラク便り』で、「~テロとの戦いとは~」と題して、イラク南部のナシリヤでイタリア国家警察部隊がテロに襲撃されたことを受け、さっそく現地の調査に飛んだことを書き、その中で奥参事官は、「これはテロとの闘いです。2001年9月11日にアメリカ人だけでなく多くの日本人もアルカーイダのテロの犠牲になり、私たちはテロとの闘いを誓ったのですが、ここイラクでもテロリストの好きなままにさせるわけにはいきません。地元の人に尋ねてみると、確たる証拠はないのですが、このような民家に囲まれた場所に自爆テロを仕掛けるなどというのは、到底イラク人のやることではないと皆言います。犠牲になった尊い命から私たちが汲み取るべきは、テロとの闘いに屈しないと言う強い決意ではないでしょうか。テロは世界のどこでも起こりうるものです。テロリストの放逐は我々全員の課題なのです。」と結んでいました。「テロとの戦い」にどう向き合うか。国際国家日本としての“覚悟”と“対応”が今まさに問われているのです。

 そのような中、12月9日、我が国政府は、イラク復興支援特別措置法に基づき、陸、海、空、合わせて1,100人規模の自衛隊を派遣する基本計画を臨時閣議で正式決定し、航空自衛隊については年内にも先遣隊を派遣するとした決断しました。世界的・総合的な安全保障や国益の観点から見ても極めて妥当な判断といえます。

 さて、ここに提出された「イラクへの自衛隊派遣の撤回に関する意見書」では、『大量破壊兵器は未だ見つからず、戦争の大義に疑問を残したままの決定』としていますが、何をもって“大義”とするのかは立場によって全く違うものになります。

 イラン・イラク戦争の際に、イラン側に協力したとして北部のクルド人を化学兵器で大量虐殺したこと、湾岸戦争の発端となったクウェートへの侵攻の際の略奪、破壊行為、フセイン政権下の国民への拷問、虐殺行為など多くの人道上の問題が指摘されるなど、イラク戦争を招いた責任はフセイン元大統領側にあるのであって、イラク国民の多くはフセイン独裁政権の暴虐から解放されたことを歓迎していることを忘れてはなりません。
 大量破壊兵器についても、さる10月2日、イラクから大量破壊兵器捜索のための米調査団が帰国し米国上下両院での秘密聴聞会に出席したデービッド・ケイ団長が、終了直後の記者会見で「これまでの現地での捜索で生物化学兵器など“実物の大量破壊兵器”は発見されなかった」と発表しましたが、一方で「フセイン(元大統領)を含むイラク高官が大量破壊兵器製造を続ける意図を持っていたことを裏付ける証拠を見つけた」との報道がなされていました。

 すなわち、「イラクが申告せずに隠していた大量破壊兵器に関連した開発計画や相当量の装備の発見」、「国連決議で認められていた射程150キロを大幅に超える射程1000キロの弾道ミサイルの開発」「北朝鮮からミサイルやミサイル技術を入手するため、1999年12月から2000年10月までベオグラードで高官レベルの協議を行った」など、文書や装備の状況証拠的には大量破壊兵器を持つ意志があったと見るのが妥当でしょう。

 最近の報道番組などでの一部のコメンテーターや、本市議会でも、イラクでのテロはレジスタンス=抵抗運動だという議論を展開しようとする人がいますが、レジスタンスを辞書で調べると、「特に第二次大戦中のフランスにおける対ドイツへの抵抗運動を指す。」としており、人類史上類を見ない民族抹殺計画ホロコーストを実行したナチスと、現在イラク人によるイラク人のための民主的政権樹立に向けて活動するアメリカやイラク復興に力を尽くす支援各国を同列に並べて、米軍並びに他国軍や文民へのテロ攻撃を“レジスタンス”などといって、さも “正当性”や“大義”があるように論じることは、テロリストたちの卑劣な暴力を正当化するに等しい行為といえます。

 本意見書では、『いま日本が採るべき道は、ブッシュ政権を国際協調の枠組みに引き戻し、国際社会が一致結束して協調できる新たな安保理決議の採択と、イラク国民による政府樹立への外交努力だ』としていますが、すでに現在イラクに展開されている、アメリカ、イギリスを含めた40カ国近い国の軍隊によるイラク復興支援の活動は、まさに、治安を回復すると同時に、イラク人による民主的な政府樹立に向けた、いわば地ならしの作業をしているのであって、イラク国民による政府が成立すれば撤退する性格のものです。また、現段階では軍隊などを派遣していないフランスやロシアも、常任理事国を務める10月16日の国連安全保障理事会では、国際社会がイラクの復興と安定の確保に一致団結して取り組むことを確認する決議1511が“全会一致”で採択されるなど、国際協調の枠組みはすでにできており、そこに参加するかしないかは各国の判断に委ねられているのです。

 意見書では、『イラク情勢は悪化を続け、日本人外交官など多くの犠牲者が出ている。非戦闘地域が一瞬にして戦闘地域に変わり得る。』いいかえれば「日本人もやられたし、危険だから行くな!」と言っていますが、たしかに本年5月のブッシュ米大統領の戦闘終結宣言後もテロにより米軍の死者は増え続けています。また、これまで縷々申し上げてきたとおりテロの標的も国連や他の支援国ばかりでなく、非軍事施設や民間人などのソフトターゲットに照準を移している感もあります。しかしながら、いま日本が自衛隊派遣を取りやめれば、他国からの信頼と尊厳を失うばかりではなく、「日本は容易にテロに屈する国である」ということが世界に散らばるテロリストの共通認識となり、そのような国家としての軟弱な姿勢は、かえってテロの標的にされやすく、新たなテロを誘発する恐れがあることなども考えなければなりません。また、日本が派遣を控えれば他国に与える影響は大きく、他国が控えれば復興に向かい始めたイラクが泥沼化することは目に見えており、それこそテロリストの思うとおりの世界が各地で現出することにつながります。

 国連安全保障理事会が12月1日に出した報告書では「イラクが国際テロ組織アルカーイダにとって理想の戦場と化した」「アルカーイダは生物化学兵器の使用を検討している」との指摘もありましたが、イラクがもし本当にテロリストの手に落ちれば、イラクは国際的テロ活動の中心拠点となり、自由国際社会は重大な脅威に晒されます。
国際社会の平和と安定が失われれば、貿易立国であり中東の原油に依存する我が国経済が存亡の危機に立たされるのみならず、そのことがさらに世界経済に与える影響も重大です。テロリストの手にイラクを渡すわけには絶対にいかず、今こそ国際社会が一致結束して対応することが不可欠なのです。

 フセインの暴政から脱してようやく自由を得た大多数のイラク国民は、自由で民主的な国家の建設を望んでいると報じられています。そのイラク国民の復興努力を支援し、イラクに平和と民主主義を定着させる国際協調行動の-翼を担うことは、日本とアメリカとの関係はもとより、平和な中東によって大きな恩恵を受ける我が国の、そして国際社会の一員たる日本としての重大な責務でもあると考えます。
自衛隊のイラク派遣は困難で危険な任務となることが予想されます。テロリストの攻撃はどこにでもありえるし、現地で自衛隊の部隊だけが攻撃対象にならないとは言えません。イラクに赴く自衛官に対して心からの感謝と敬意を表しつつ、任務達成と無事帰還を切に願うものであります。

 よって自由民主クラブは、武器使用基準等の見直しや自衛隊法等の改正を行うなど、自衛隊員並びに大使館員等の安全確保に万全を期すとともに、12月9日に小泉首相が自分の言葉で語った派遣の意義を、あらゆるメディアを通じて国民への説明責任としてさらに重ね、現地の状況を充分に見極めたうえで、自衛隊員が自信と誇りをもって現地に赴くことができる環境整備をすることを、このあとに私たちが提出する「イラク復興支援に関する意見書」で政府に強く望むもので、ここに提出されている「イラクへの自衛隊派遣の撤回に関する意見書」には全く同意することができないことを申し上げ、本意見書への反対討論といたします。

 なお、この民主・共産・市民の党などが提出した「イラクへの自衛隊派遣の撤回に関する意見書」は賛成少数で否決され、私たちが提出した「イラク復興支援に関する意見書」は自民クラブ・市民クラブ・公明などの賛成多数で可決されました。

※ 産経新聞に、私たちが提出し可決した「イラク復興支援に関する意見書」に関する当日並びに関連記事が掲載されました→12/18、12/19「産経抄」、12/19「主張」

 

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